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Buptiga

ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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ソルティチョコレート(3)

字数制限にひっかかったため、分けました。
ビターマドレーヌソルティチョコレート(1)(2)の続きです。

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 偶然がいたずらして赤い糸で結ばれるなら、兄妹と、元カレ元カノとでは、どっちが気まずいんだろう。たぶん、普通は後者じゃないだろうか。だけどミクオは、俺を見てにやりと笑うだけで、三回目をやろうとは言いださなかった。リンの元カレですと公言していたわけではなかったし、そうするのが自然だった。
 リンは目を見開いただけで、特に何も言わなかった。一回目で済んでいたら俺以外の男に渡せただろうに、なんだか心苦しい。リンが必死に用意したはずのチョコは、今、俺の鞄の中に収まっている。
「一回目って、カイトさんがリンを引いたんだっけ?」
「…うん。でも、レンになって良かったのかも」
「え」
「おいしいか、わかんないし」
 ため息をついて、リンは顔をうつむけた。もらったチョコはオレンジの包み紙で可愛くラッピングされていて中身が見えなかったから、どんな出来かはまだ見ていなかった。
「お姉ちゃんにも手伝ってもらったから、大丈夫だと思うけど…」
「中身、なんなの?」
「……トリュフ?」
 疑問形が不安だ。メイコさんの指導なら、たぶん、おそらく、おおかた、大丈夫だろう。よく知らないけど、トリュフって難しいんじゃないのか。初めてのチョコ作りで、よくそんなものを作る気になったものだ。
「あーなんか、うん、カイトさんは命拾いをしたな」
「…うるっさい」
「リンも、カイトさんに幻滅されずに済んだし」
「うっわムカつく。カイトさんはそんな人じゃないでしょ?!」
 元気に噛みついてきたので、少し安心する。無理やり企画を承諾させた感じだったし、ちょっと気になっていたのだ。二回目にリンを引き当てたのが俺で、良かったのかもしれない。リンが何を作ったって、俺は驚かないし。
「……リンはさ、カイトさんが良かった?」
「え?」
「だから、あの中で」
「えっと、それは、そういう意味で?」
 そういう意味でも何も、これは合コンだ。でも、カイトさんはおすすめしない。あの人はたぶん絶賛片想い中で、しかもその相手は―――
「だって、カイトさんって」
「うん?」
「レンが前に話してた、うちのお姉ちゃんを好きかもっていうセンパイなんじゃないの?」
「…覚えてたんだ」
 詳しくは知らない。知らないけど、カイトさんは数年前まで、メイコさんと同じピアノ教室に通っていたらしい。俺が入部したとき、名字を聞いて兄弟か親戚と思ったらしく(大当たりだ)、話しかけられたのが最初だった。今では、部活の中でも特にお世話になっている先輩だ。メイコさんのことも、たびたび聞かれる。
「今も好きなのかなぁ」
「…あの人、来年からメイコさんと同じ音大に行くらしいよ」
「ええっ、お姉ちゃんを追いかけて?!」
「それはどうだか分かんないけど、会えたらいいなとは言ってた」
 そういう人を合コンに連れて行ったのはルール違反だった気がしなくもないけど、ミクオの采配だし、俺に口を挟む余裕はなかった。ミクオはたぶん、このことを知らない。たまたま俺が、なりゆきで知っているだけだ。
「私もさっき、メイコさんは元気、って聞かれたの。なんか、小さい頃はうちに遊びにきたこともあったらしくて。私はあんまり覚えてないけど」
「メイコさんは、どう思ってるわけ?」
「分かんない。帰ったら聞いてみようかな」
 いいなぁ、お姉ちゃん。リンがうっとりとそう言うから、俺は苦笑した。カイトさんはカッコイイし、あんな人になら一途に想われてみたい、ということだろう。これがイケてない男だったら、途端に反応が変わるに違いない。ただしイケメンに限る、ってやつだ。
「それじゃ、神威先輩?それともミクオ?」
「えー?まぁ、二人ともいい感じだったけど。でもミクオ君はミクちゃんでしょ?」
「…選択肢が少なくて申し訳ない」
「ううん、でも、3人の中では一番神威さんがタイプかなー」
 意外だった。まず、リンがタイプだとかを考えていたことが、意外だ。ちゃんと、合コンだという意識はあったらしい。それにしても、ルカさんの評価も高かったし、今日は神威先輩が大人気だ。
「そう言うレンはどうなの?」
「いや、俺は別に…」
「グミさんは?今日ずっと話してたでしょ」
 それは、カラオケの間は隣の人としか話せなかったからだ。けれど確かに、グミさんは話しやすい。学年は一つ上だけど気さくだし、リンみたいにぽんぽんと話すから、話題にも困らなかった。
「楽しい人だとは思ったよ」
 グミさんのチョコが、チョコ大福なのかどうかも、気になるところだ。二回目にグミさんを引いたのは、確かミクオだった。明日、中身がなんだったか聞いてみようか。ミクさんのチョコを諦めたことも、労ってやらなきゃいけないし。
「……私からのチョコでごめんね。も、もしかして一回目引いた時、グミさんだったんじゃ…」
「は?いやだから、一回目は神威先輩とグミさんだったんだろ」
「……あ。そっか」
 そもそも一回目で神威兄妹がかち合っていなければ、二回目をする必要はなかったのだ。何を焦っているんだろう、リンらしくない。横を窺うと、何故かリンは頬を赤く染めていた。
「え…リン?」
「えへへ、へ……っくしゅ」
 照れ笑いだか誤魔化し笑いだかを浮かべたと思ったら、顔を歪めた。何事かとひやっとしたけど、リンはそのまま顔を覆って、小さくくしゃみをした。女の子のくしゃみって、なんでこんなに小さいのか、謎だ。
「…やっぱ寒いの、その恰好」
「えっ。そんなこと……うーん、ちょっと寒い、かな?」
 リンのコートはショート丈だし、ブーツを履いていたとしても膝から上は剥き出しで、俺から見たらものすごく寒そうだった。スカートも、ひらひらして短いし。
「そんな短いの着てるからだろ」
「足は寒くないもん」
 じゃあどこが、と言いかけて気づいた。キャメル色のショートトレンチの左肩が、ひどく濡れている。
「っ、ごめん」
 慌てて傘を傾けた。今度は自分の右肩が外に出る。いつか雑貨屋で買ったこのカエルの傘は、おもちゃみたいで可愛いけど、二人で入るには少し小さすぎた。
「わっ、ちょっと、レンが濡れてるって!」
「いいから」
「大丈夫だってば」
「大丈夫じゃない」
 カエルの持ち手を握った俺の手の上から、リンが手を重ねて押し戻す。それをまた押し返そうとすると、リンがぐっと身体を寄せてきた。
「これで平気でしょ。ていうかほんとに、大丈夫なの、レンなら」
「……俺なら?」
「背低いもん。身長差あると、雨が吹き込むの。レンに傘持ってもらってからは濡れてなかったよ」
 ぐさっと刺さる一言に悪気はなかったらしく、リンは俺のせいではないんだと必死に言い募った。カイトさんの背が高いから、傘の位置も高くなって、雨が入ってきてしまったらしい。俺の低い身長なら、問題ないようだ。
「あ、でもカイトさんが悪いわけじゃなくて、こればっかりはどうしようもないし、」
「…俺のコート着る?風邪ひくよ」
「えっ、いいよべつに。裏地までは染みてきてないもん」
 ほんと、平気だから。そうやって強く念を押されると、それ以上は何も言えなかった。傘を二人の真ん中に戻した今も、確かに濡れてはいないようだった。さっきよりも身体をくっつけているせいかもしれないけど。
「…レンは、オレンジの傘、もう差さないの?」
 リンがこのレモンイエローの傘を買った時、俺もオレンジの色違いを買わされた。リンがオレンジの方が好きなのは知っていたけど、黄色い傘は小学生みたいで恥ずかしかったから、俺がオレンジにするとそこだけは主張した。それだけに、ちょっと後ろめたい。
「俺にはいいかげん、可愛すぎるよ」
 本当は、最近までは学校の俺のロッカーにあって、いざってときの置き傘にしていた。家のクローゼットに押しこめたのは、リンと別れてからだ。
「そっか」
 呟くリンの横顔が、寂しがっているように見えるのは、自惚れだろうか。
(別れたのに、お揃いの傘なんて持ったらおかしいだろ?)
 言葉は声にしないし、できない。付き合っていたことを思い出すような話題は、たぶんお互い避けていた。

 会話がとぎれて、黙々と歩く。リンの足元を見るともなく眺めていたら、同じ足が華奢なミュールを履いていた時のことを思い出した。そうだった。目線が近いことが懐かしいのは、中学の頃を思い出すからじゃない。
 去年、デートのたびに、リンは無理してヒールの高い靴を履いてきた。それで喧嘩になったこともある。その頃を思い出して――まだそんなに経っていないのに、どうしてかひどく、懐かしいと思ってしまうのだ。


 見慣れた門扉の前で、足を止める。朝はリンが俺の家に来るし、帰りは別々だし、もう休日に出かけたりもしていなかったから、リンの家まで来るのは久しぶりだった。リビングの明りがついている。メイコさんがもう帰っているんだろう。
「レン、傘持ってきなよ。明日返してくれればいいし」
「うん、助かる」
「じゃ、また明日」
 そう言って、だけどリンは傘から出ようとしなかった。
「…チョコ、おいしくなかったら、全部食べなくていいから」
 雨が降っているときって、どうしてこんなに静かなんだろう。リンの声は、雨音にぽつんと浮かび上がって、傘の中ではよく響いた。
「おいしいよ、たぶん」
「そう言って焦げたマドレーヌ全部食べたでしょ、中学のとき」
「…おいしかったよ」
「レンって嘘ばっか」
 黒焦げのマドレーヌは、ちっともおいしくなかった。リンの言う通りだ。俺は、ほんとに、嘘ばっかりだ。カエルの持ち手を強く握る。力を入れすぎて、指が少し白くなった。
「……リン」
 視線をあげる。リンは俺を見ていた。同じ高さにある、碧くて綺麗な目。
「リン、」
―――――ヴー、ヴー、ヴー、ヴー、
 唐突に、ケータイのバイブ音が雨音を塗りつぶした。俺のじゃない。碧い目が微かに揺れる。バイブ音は、鳴り止まなかった。
「……電話」
「……っ、うん」
 弾かれたように、リンは鞄の中を探った。引っ張り出したケータイのサブディスプレイを見て、あ、と声をもらす。慌てて開いて、耳に押し当てた。
「もしもし?」
 ちらりと俺を見て、顔の前で片手を立てる。ごめん、ということだろう。俺は首を横に振った。
「あ、はいー、もちろんわかりますって、神威さんですよね?」
「はい、はい、いいえー、こちらこそ、楽しかったです!」
「えっ………いえ、そんなことないです!ふふ……喜びますよー」
「えと、来週のですか?私はどっちも空いてますよー……っ」
 傘の柄を、リンの肩に預ける。俺がそのまま手を離すと、当然傘は落ちそうになって、リンが慌てて持ち手を掴んだ。
「レッ…あ、はい、いえ、それは聞いてみないとですけど、」
 驚いた顔で傘を俺に差しかけるリンから一歩、身体を引く。雨が頬を打った。
『また、あした』
 口パクで、伝わっただろうか。手で雨を避けながら駆け出す。家はすぐ近くだから、そんなに濡れることもないだろう。傘は必要なかった。



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お疲れさまでした。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
今回、初めて全消しを経験しまして…。同じものを書く気力が湧いてこなくて困りました。いつも以上に設定を並べただけですが、ご容赦ください。

…一つだけ、自慢してもいいですかね!自慢しますよ!この時間まで起きてたら、プーチンPの最新作の試写会ニコ生、見れちゃったんです!!一回(二回?)じゃ、解釈なんて無理でしたけど…!(何回見ても無理かもしれませんが笑)はやくもう一度見たい…!!!

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