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ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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たいやき

が、テーマのはずだったレンリン小話。
たいやきの影が薄い。

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 うららかな陽射しとは裏腹の冷たい風に吹かれながら、レンは帰途を急いでいた。駅前を賑わす人混みは、休日特有の弛んだ空気をまとっている。土曜日――一般的には、一週間のうちで人々が最もリラックスできる曜日であり、世の鏡音達にとっては稼ぎどきでもある。今日のように空が明るいうちにあがれるのは、珍しかった。
 ボーカロイドはサービス業だ。基本的には娯楽目当てで契約されることが多いので、自然と出勤要請も休日が多くなる。商業目的の契約も無くはないけれど、長期出張扱いになるから、あれは特別だ。初音ミクやGUMIに比べて商業利用の少ない鏡音は、金曜から日曜にかけてが山場になるのが普通だった。
 晴々とした気分だ。鼻高々と言い換えてもいい。今日の仕事は、我ながら完璧だった。数いる鏡音レンの中でも、自分はネタ曲が得意な方だと思っていたが、今回の曲は特に相性が良かったのかもしれない。こんなに早い時間に帰れるなら、夕飯も豪華にできるだろう。今日は、リンが帰ってくる。ささやかなお疲れさま会と洒落こむのも悪くない。
 商業利用の少ない鏡音でも、企業から依頼が来ることは時折ある。今回のリンの仕事は、某地方企業のCM音源収録だった。相方のリンは大層な方向音痴で、本当ならレンも付き添いたかったのだが、あいにく仕事の都合がつかなかった。数日間の泊まりこみ、しかも慣れない地方都市で、疲れているだろう。せめて、労いたい。
 もうそろそろリンは家に着いているはずだ。迷っていなければ、の話だが。ポケットから携帯端末を取り出して確認すると、着信はなかった。15分迷ったら、連絡を入れるように言ってある。大丈夫だとは思うが……ともかく早く帰ろう。
 携帯端末を再びポケットに滑り込ませて、レンは改札に急いだ。いや、急ごうとした。少なくとも身体は改札の方を向いていた。しかし、目の端に飛び込んだ文字に、レンの足はくるりと方向を変えた。



 リビングのドアを開けると、後ろ向きのソファから白いリボンが覗いていた。レンはそのまま加速して、腕を広げた。
「リーン!お帰り!」
 ソファの背から被さるようにして、リンの首に抱きつく。即座に振り払われることを覚悟していたが、リンは軽く肩をびくつかせただけだった。
「…レン」
 数日ぶりにすぐ近くで見る目が、ぱちぱちと瞬きを繰り返している。
「ごめん、寝てた?」
 不覚にも、お休みのところを邪魔してしまったらしい。眠いのか不機嫌なのか、リンは目を細めてレンを一瞥した。それから壁の時計へ視線を移して、再びレンを見る。
「…ただいま。どいて」
 ようやく覚醒した様子で、リンは首に巻きついたレンの腕を外しにかかった。されるがままに押しやられたレンの左腕の先で、がさりと音が鳴った。
「何、それ」
「帰りに買ったんだ」
 まだ温かい紙袋を軽く振る。
「バナナ餡のたいやきだって。リン、おやつ食べた?」
「……まだ」
 おやつには遅い時間だが、夕飯はすぐにはできない。ディナーのデザートにたいやきは不向きな気がするし、何より小腹が空いていた。リンをダイニングに誘導して、レンはいそいそとキッチンに向かった。
「紅茶?コーヒー?緑茶?」
「ミルクティー」
「ロイヤル?」
「ふつうのに、牛乳入れて」
「了解」
 ケトルを火にかけている間に、廊下に置きっぱなしだった買い物袋をとってくる。食材を冷蔵庫や棚に片付けながら、妙に静かなダイニングが気になった。振り返ると、リンは頬杖をついて、ぼんやりとこちらを見ていた。
「あそこの駅のさ、改札の向かい側わかる?前にたこ焼き屋があったところ。あそこに、たいやき屋ができててさ」
「うん」
「バナナ味、って幟が出てんの。バナナだよバナナ。思わず引き寄せられたよね」
「ふーん」
「あ、オレンジ味はなかったんだ、残念ながら」
「…べつに」
 ヒューと派手な音をたてて、ケトルが湯の沸いたことを知らせた。火を止めて、ポットとカップを温める。アッサムは切らしていたので、ニルギリを選んだ。茶葉を蒸らして、ミルクを温めて、たいやき用の皿を出して……たいやきはまだ仄かに温かいが、やはり温めなおした方が良いだろう。レンジとトースターと、どちらにしようか。
「レン」
「レンジだと湿る…え?」
「おかえり」
 ダイニングを見やると、リンが気まずそうに顔を背けた。
「今更?」
「…うるさい」
 ティーポットの横に置いた砂時計に目を走らせる。砂は半分ほど落ちていた。あと1分半…足りないが、仕方ない。
「私にだっておかえりくら、い……ん」
 ただいまの挨拶を紅唇に返す。久しぶりの感触に、思い直した。紅茶が渋くなったら、また淹れれば良い。




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このレンは、ミルクは後から派。

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こちらは管理人シロセが個人の趣味で萌を語るブログです。同人的要素を含みますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。また、製造元・版権元・その他各企業様とは全く関係ございません。
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