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Buptiga

ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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スイートマカロン(1)


マカロン全く出てこない。
ビターマドレーヌソルティチョコレート(1)(2)(3)フローズンチョコレートの続きです。

これ書き始めたの確か4月で……一応5月くらいの設定だったりとか……。

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 一階から二階まで、ひと息に階段を駆けあがる。そのまま勢いで次の階へ進みそうになって、慌てて急ブレーキ。一段だけ踏み出してしまった足を戻したところで、チャイムが鳴った。一瞬ドキッとしたけれど、腕時計は始業五分前を指している。予鈴だ。それでもギリギリなことには変わりないので、私は早足で二階の廊下を歩きだした。一組だから、一番遠い。
 この学校の教室は、一階が三年、二階が二年、三階が一年になっている。年寄りほど下の階なのよって、卒業した三年の先輩達が笑ってたけど(そういえば職員室も一階だ)、私も一つ年をとって四月から二階になったのだった。まだ、慣れない。「卒業した三年の先輩」というのも、正確ではない。今の三年はグミさん達の代だから、ルカさん達の代を三年と呼ぶのはおかしい。分かってるけど、ちゃんと呼ぼうとすると違和感があった。私の中で、ルカさん達は永遠に「三年生」なんじゃないだろうか。
 教室のドアを開けると、意外な人物が目に入った。静かに一人で席についているにもかかわらず、クラスメイトの中でぽっかりと鮮やかに浮いて見えるその人は、私の大親友だと勝手に思っている。
「ミクちゃん!おはよー」
「おはよう」
 読んでいた楽譜から目をあげて、ミクちゃんが微笑む。何度見ても、びっくりするぐらい可憐な笑顔だ。
「お仕事は?」
「交渉したのよ」
 新学期早々のお仕事は、確か今日までだったはずだ。けれどミクちゃんは、形の良い唇をニッとつりあげた。
「少しでも出席日数を稼がなきゃね」
「もしかしてミクちゃん、今週の土日もお仕事?」
「ええ。今日のを、土曜にまわしたから。ごめんね、買い物行こうってずっと言ってるのに、なかなか……」
「いーのいーの、それより卒業が大事でしょ?」
「そう、ね。リンと一緒に、卒業したいもの」
 私と一緒に、と言ってくれたことが嬉しい。ミクちゃんはあんまり、そういうの口に出してくれないから。思わずにんまりしたら、ミクちゃんが怪訝な顔で見上げてきた。チャイムが鳴り始めたので、釈明の言葉は飲みこむ。今度こそ、本鈴だ。鳴り終わるまでの僅かな間に、ミクちゃんは教室の時計へ目を走らせた。
「そういえば、今日はずいぶん遅かったのね。寝坊した?」
「ううん……あ、えと」
 咄嗟に首をふって、すぐに後悔した。寝坊だと言ってしまえばそれで済んだのに。どこから説明したらいいか分からなくて悩んでいるうちに、先生が教室に入ってくる。これ幸いと曖昧にごまかして席に戻った。
 あとで聞かれたら、何て言おう。ミクちゃんには、レンのことは何一つ話していなかった。



 あの日からずっと、私の朝は早い。さすがに始発になんて乗らないけど、レンと一緒に登校していた頃に比べて、三十分も早く家を出ている。レンの家の前を通り過ぎる時、レンの部屋を見上げるのが、新しい習慣になった。カーテンはいつも閉じていた。寝ているのかもしれない。朝の準備は二十分で済む、って聞いて、男の子はいいなぁと思った覚えがあるし。
 カーテンが開いていることを、期待しなかったと言えば嘘になる。でもきっと開いていたらそれはそれで、私は走って逃げたんだろう。今日みたいに。

 今日も、早い時間に家を出た。最初は眠かったこの時間も、最近では慣れてきていて、特に今日は暑いくらいの快晴だったから、めずらしく足取りも軽かった。生活の中にレンがいなくたって私は大丈夫なんだって、鼻歌まじりにそんなことを考えていた。
 けれど、二つ目の角を曲がったところで、私は慌てて回れ右をした。レンが、いたのだ。学生鞄を肩にかけ、向かいの家のへいにもたれて、ぼんやりと自分の部屋の窓を見上げていた。
(なんでいるの……!)
 ちょっと前まで水面のごとく穏やかだった私の心は、あっという間に大波を立てて荒れ模様になってしまった。考えてみれば、駅までの道は一緒なのだから、いままで鉢合わせしなかった方が不思議なのだった。油断していた。違う駅を使おうか、なんて考えが一瞬頭をよぎったけど、お金がかかるからそれは避けたい。
永遠のような五分を数えて、私はもう一度、角を覗きこんだ。レンは、同じ場所にいた。今度は俯いて、足元の石を転がしている。
 かつてあの場所は、私の定位置だった。レンの家の向かいのへいには、腰の高さに出っ張りがあって、ちょっと体重をかけたりするには具合が良い。へいに背を預けると、真上にレンの部屋の窓が見える。毎朝レンの家の前に来ると、そうして窓を見上げた。私が着いてしばらくすると、カーテンが揺れる。支度を終えたレンが顔を覗かせて、ひらりと手をふってくれるのだ。今行く、ってそんな感じの合図。良いことがあった時は元気に、ちょっと寝坊気味の時は焦って、なにか考え事をしている時はそっけなく、そしてたまに……何だか優しげな笑顔で。日によって少しずつ違う、その大好きな一瞬を失くすのが惜しくて、どうしても惜しくて。自分から別れを切り出しておきながら、一緒の登校を強請った。そうしたらレンは、別れた後も何も変わらずに、合図を続けてくれた。それなのに、今度は勝手に耐えきれなくなって、私はこうしてレンを避けているのだ。
「……ふ」
 無意識のため息が、ほんの少しだけ口から零れた。それが聞こえてしまったのからかどうかわからないけど、ふいにレンが顔をあげて――こちらを見た、気がした。
 急いであとじさって、私は咄嗟に角の家のガレージへ滑り込んだ。停められた軽自動車の後ろに身を潜める。不法侵入!近所だけど、この家の人とは話したことがない。見つかったら何て言い訳をしよう。そもそも、レンと目があったわけじゃないし、もしかすると気づかなかったかもしれないし、ここまでする必要は……そう思った矢先、車の後側の窓とフロントガラスを通した向こう側に、A高の制服が映った。位置の関係上、首から上は遮られて見えなかったけど、首もととかバッグのかけ方とかで簡単に分かる。レンだ。
 勢いよく飛び込んできた制服姿はすぐに足を止めて、しばらく道の先を見つめているようだった。
「…………リン?」
 小さな呟きに、どきっとする。見慣れた制服は、そのまま道の先――私の家の方へ、歩いて行ってしまった。
他人の敷地に無断で入り込んでいる気まずさを持て余して、三分。車の窓ガラス越しに、再び同じ制服が映った。腰をあげて角度を調節する。俯いたレンの顔は無表情だった。角を曲がって、レンの家の方へ戻っていく。それを見送って、また三分。けっきょく私は、レンとは反対方向へ歩き出した。自分の家の前を通り過ぎて、いつも通学では使わない駅を目指す。遠回りで遅刻ギリギリだけど、レンと同じ道を通るのは、会ってしまいそうで怖かった。
 駅に着いて、お財布を出そうと鞄を開けた時、ケータイにメール着信があるのに気づいた。お姉ちゃんからだった。
『さっきレン君が来たわよ。もう家を出たって言っといたけど。あんた、一緒に行く約束してたんじゃないの?』
 自分でも馬鹿だと思うけど、私はそれでようやく確信できたのだ。レンはずっと私を待っていたんだ、って。


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終わらん。

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こちらは管理人シロセが個人の趣味で萌を語るブログです。同人的要素を含みますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。また、製造元・版権元・その他各企業様とは全く関係ございません。
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