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ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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切り魔(前)

ミクとルカの学パロ。
好きキャラの受難はよくあることとはいえ、さすがにこれは可哀想だったかも。

人によっては不快かもしれません。
何でも良い方だけお進み下さい。
特に、満員電車にトラウマのある方は進まないが吉。


------------------------




「はー」
 大きなため息が口に出てしまい、ミクは慌てて口をつぐんだ。ラッシュ時の駅のホームは人で溢れかえっていたが、ミクのため息に振り返る者はいなかった。それでも少し、恥ずかしい。
 はっと思いついて、肩にかけた学生鞄を点検する。お気に入りのキーホルダーが健在なことを確認して、胸を撫で下ろした。ついでにポーチを取り出して、鏡で髪をチェックする。やはり、かなりよれよれになっている。今朝は結構念入りにセットしたのに、すべて水の泡だ。むしろいつもよりひどい。
 前髪だけ直し、あとは諦めて鏡をしまう。電光板と時計を見比べると、乗り換えの電車がくるまであと2分だった。
(ルカさんに会えなかったな……)

 新学期の今日から、休み前までと違う路線での登校だった。市内で場所を変えただけのプチ引っ越しをしたので、通学路が微妙に変わったのだ。新しい路線はルカが利用しているはずで、探したらいるかなと期待して家を出たけれど、実際はそれどころではなかった。新たな最寄り駅でホームに入ってきた電車を見て、ミクは顔が引きつった。噂には聞いていたが、予想以上の満員電車だったのだ。これ以上乗れないのではないかと思ったが、詰め込まれた。幸い、何とか開かない側のドア付近をキープできたので、まだマシだったのかもしれない。押し潰されそうな圧力と戦い、車内の蒸し暑さに耐えること約20分。やっと解放された時には、今日一日分の元気をすべて使い果たしていた。これから毎日あの路線を利用すると思うと、憂鬱である。
 ここから先の電車は以前と一緒なので、気が楽だ。この線も人口密度は高いが、あの満員電車に比べたら空いている方なのだと思い知った。気分を切り替えるために、ヘッドフォンを取り出す。例の満員電車がホームに入ってきた時、とっさに外したのは正解だった。鞄に入れておかなければ、壊れていたかもしれない。明日からは、イヤホンにしよう。
「ミク!!」
 ぼんやり考えていたら、甘い香りが腕に飛びついてきた。むにゅ、と柔らかい感触。横を向くと、ルカがあまり見慣れない表情でミクを見下ろしている。
「ルカさん!おはようございます、どうかしま…」
 ミクの問いかけを、電車到着のメロディが遮った。ルカはミクの腕を掴んだまま、何故か更に身を寄せてくる。ミクの左半身の背中側と、ルカの右半身のお腹側が、密着した。
「あの…?」
「このまま、我慢して」
 囁くような声が、耳をくすぐる。ルカに促すように身体を押され、電車のドアが開いていることに気づいた。そのままの体勢で、冷房の効いた車内に乗り込む。一瞬で汗が冷えたが、ルカとひっついている部分だけは熱かった。
 ルカは反対側のドアまでミクを引っ張ってくると、座席との仕切りに背中を預けた。向かい側のドアが閉まって、電車が動き出す。さすがにもういいのかなと思って身体を離そうとすると、ぎゅっと力を込められた。
「ごめんなさい、もう少し」
 ルカの顔が、強張っている。何か切羽詰まった事情があるのかもしれない。そのまま、ミクはルカに、ルカは後ろの仕切りに寄りかかる形になる。ミクが力を抜いて身体を預けても、ルカの表情は緩まなかった。
「今日から、私と同じ線を使うんだったわね」
「あ、はいっ。覚えててくださったんですね!」
 引っ越しのことは、夏休みの前にぽろっと言った程度だ。嬉しく思いつつも、ミクは急に自分の乱れた髪が気になり出した。ルカの位置からは、ミクのツインテールの左片方が、よく見えてしまうだろう。ミクと同じ路線に乗っていたはずなのに、ルカの髪はいつも通り一筋の乱れもなかった。
「ルカさんは、何分のに乗ってるんですか?」
「この電車に乗りたいから、35分着の急行に」
「あれ、私も同じです。でも私より遅かったですよね」
「今日はお茶を買っていたから」
 ルカが話すたびに、息が首筋にかかってくすぐったい。ルカの使っているシャンプーのものか、甘い香りがミクを包んでいる。もう少し、ってあとどれくらいだろう。
「えっと。あの電車って、すっごい混むんですね」
「……ええ」
 二の腕を抱きしめる力が少し強くなる。押しつけられた弾力に、ミクは思わずそちらへ目をやってしまった。豊かな胸に、自分の左ひじが埋まっている。一体何を食べたら、こんな神秘的なスタイルになれるのだろう。視線を引きはがして前を向くと、知らない少女と目が合った。ミクやルカと同じ学校の制服を着ている。少女は慌てたように顔を背け、隣の友人と小声で会話を始めた。
 見られている。確かに、この体勢は少し近すぎるかもしれない。一度意識してしまうと、だんだん顔がほてってくるのが分かった。

 それからはルカと何の会話もないまま、電車は降りるべき駅についた。ホームに降りてもルカはミクの腕を離さなかったが、さすがに階段にさしかかると、少し力を緩めた。腕を組むようにして、階段を下る。
「お手洗いに寄っても良いかしら」
 断る理由もなく、階段脇の女子トイレへ進む。ドアをくぐった途端、ルカはさっと離れた。
「ごめんなさい、歩きづらかったでしょう」
「構いませんけど…どうかしたんですか?」
「…スカート、気がついていた?」
「え?」
 ルカが、ミクのスカートの左後ろあたりを示す。ごめんなさいねと言いながら、プリーツをそっと摘まんだ。
 ひらり。プリーツが広がるはずのそこから、僅かにミクの太腿がのぞく。
「あ…っ」
 腰のあたりから裾まで、スカートが一直線に裂けていた。


「スカート切り魔というの。最近、あの路線で被害に遭う子が多いらしくて」
 切り口はすっぱりと鮮やかで、自然に破けたとは思えない。おそらく、カッターか何かで故意に切り裂いたのだろう。一種の痴漢行為だ。
 満員電車の中で切られたなら、乗り換え駅で歩いている間はずっと、スカートが裂けていたことになる。悔しさと恥ずかしさに、ミクは涙が滲むのを抑えられなかった。
「……裁縫道具は、持っている?」
「も、って、な…」
「…そう。私もなの。困ったわね…。ああ、カーディガンか何かは?」
 ミクが持っていないことを告げると、ルカは自分のカーディガンを差し出した。
「ちょっと不格好だけれど、これを腰に巻くといいわ」
「はい……」
 紺色のカーディガンを受け取ろうとすると、ルカは自らカーディガンを広げ、ミクの腰へ回してくれた。長袖の両腕を持ち、ためらいもなくぎゅっと結ぶ。持ち主の性格から察するに、このカーディガンの袖が結ばれるのは初めてだろう。こんなに強く結んだら、伸びてしまうのではないだろうか。申し訳なくて情けなくて、このうえルカに迷惑をかけたくないのに、ミクの涙腺は壊れてしまったようだ。ルカを煩わせていることが、何より辛かった。




------------------------
ミク様ご免なさい。
ミクの誕生日に出す予定だったなんて今となっては信じられない。
全くもってお祝いする内容ではないw
これだけだとあんまりなので後編へ続きます。
次はリンも出るよ!というか予定より出張りすぎて困った。

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