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Buptiga

ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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イグナイト

敬愛する虎さんキリコさん、お二方に捧げます。

レンリン旅パロの続きです。未読の方には不親切な設計になっておりますすみません。
こちらのフロンティア(前編後編)を先にご覧いただけると嬉しいです。


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 天蓋付きのベッドの足もとに、揃えて置かれたブーツ。襞を作って四隅へ流れるカーテンの陰には、畳まれたセーラーとショートパンツが重ねてあり、一番上にちょこんとリボンが乗っている。そこまでは、良い。レンの片割れは、気が向けばきちんと整頓できるタイプだった。
 問題はその先である。ふかふかに空気を含んだ寝具へ、少女は手足をくたりと沈ませていた。赤い唇から幼げな寝息が漏れるたび、顔近くに散った金糸が僅かに震える。タオル地の真っ白なバスローブは片腕を通したのみだ。胸元で折りたたんだ腕が肝要な部位をかろうじて覆っているものの、成長途中のなだらかな乳房は殆んど晒されている。はだけた裾から片足が覗いて、ランプの光をはじいた。
「……器用な寝相だな」
 苛立ちをのせて吐き捨てたつもりの台詞は、情けないほどに掠れていた。頭がくらくらする。先程の烏の行水では、のぼせるはずもないのに。
このままでは風邪をひかせてしまう。はやく、起こさなければ。ちりぢりになった思考のなか、それだけが形を成して、レンは渇いた喉を鳴らした。
「……リン」
 その名前を口に出した途端、カッと体が燃えた。熱に促されるまま、ふらりと未踏の領域へ近づく。どこか遠くで、ベッドが軋む音がした。
 腕に収めた身体は、ひやりと冷たい。体温を分け与えるべく、剥き出しの腕や足に手のひらを当てていく。芯から冷えた後の肌は、レンの熱を拒絶した。暖めた傍から逃げていくそれを、一心不乱に追いかける。湿った寝息がレンの首筋を撫でるたび、奥底の焔が温度をあげた。
 手が白い脇腹を滑った時、耳元でふいにくすりと息が漏れた。

サァ―――――――

 雨音が耳に戻ってくる。それと同時に、ぞっと血が下がった。息を殺して窺うと、リンの呼吸は再び規則正しさを取り戻していく。元へ戻ったリズムをしばらく聞いてから、レンはのろのろと腕を解いた。

 静かにベッドを抜け出して、クローゼットを開ける。手にとったマントはまだ湿っていたが、構わず羽織った。ドアノブにかけた手を躊躇い、向き直る。チェストに用意されたバスタオルを取って、手早くリンの身体に掛けた。そして今度こそ、部屋をあとにする。

 深夜近いロビーは、ひっそりとしていた。けれど予想通り、フロントには人がいる。壮齢の女性スタッフを選んで声をかけると、落ち着いた笑顔が応えた。
「毛布の予備ってありますか」
「ございます。お部屋が寒うございましたか?」
「……ああ、いや。部屋で連れが寝てるから、掛けてやってくれます?」
「畏まりました」
 部屋番号を告げてカウンターに鍵を置く。玄関へ足を向けると、慌てた声が呼びとめた。
「あの、お散歩ですか?傘のご用意を……」
「要らない。ありがとう」
 ポーチへ出ると、雨脚は更に激しくなっていた。これほどの水量なら、腹に宿る火を消し鎮めてくれるだろうか。


 びしょ濡れで帰ってきたレンを迎えたのは、飛んできた枕だった。
「どこ行ってたの!もう、急にホテルの人来させるし、何なの!!」
「腹出して寝てるからだろ」
「レンの気配がないから敵襲かと思ったでしょ!」
 さすがに、他人が部屋に入れば起きてしまったらしい。危うく怪我をさせるところだったと、リンは頬を膨らませた。毛布にくるまって膝を抱えたまま、不満げに身体を揺らす。その目に安堵が含まれているのを見て、レンは少し申し訳なくなった。
「いつまで経っても帰ってこないし。ほんと、何してたの?」
「……散歩」
「散歩ぉ?」
 雨雲のせいで外はまだ暗いが、もう明け方近いはずだ。早寝早起きの彼女がこんな時間まで起きているのは珍しかった。ずっとレンの帰りを待っていたのだろうか。
「もう、昨日からなんか変だよ、レン」
「……悪い」
「リンを一人にするし」
「ごめん」
 人一倍賑やかな彼女が、人一倍寂しがり屋なのは、レンが一番よく知っている。旅を始めてすぐ、宿では一人ずつ部屋をとると決めた時も嫌がっていた。普段も、寝る直前までレンの部屋に入り浸っている。それは別に、レンに限ったことではないはずだ。ミクの城に大勢で泊まった時などは、随分はしゃいでいた。旅で知り合った人々と連絡を取りつづけるのはいつだってリンだったし、その人脈に何度も助けられている。二人旅なんて本当は彼女には物足りないだろう。
「もう朝になっちゃうから、寝よう」
「うん。レン、もう一度お風呂入ったら?風邪ひくよ」
「入るよ。だからリンは先に寝てて。……どこにも行かないから」
 リンは膝へ視線を落とすと、白い手を毛布から出してこちらへ突きつけた。微かに震える握り拳から、小指が立てられる。その仕草に胸が詰まって、レンはそっと自分の小指を絡めた。
「ん、約束な」
「……うん」
 すっぱ抜けて明るく、瞳に宿す意志はレンよりよほど強く、しかし脆く繊細な面も併せ持つ彼女を、守ると誓ったのは自分なのに。燻って残った燠火が、いつか彼女を焼いてしまいそうで怖い。
「どこにも行かないでね、レン。絶対だよ。信用するからね。裏切ったら、私、怒るよ」
「はは、そりゃ怖いや。……約束するよ」
 けれど、どうか、限界までは。彼女が背中を預ける相手は、自分でありたかった。絡めた指をもう一度ぎゅっと握る。遠い日の誓いを、改めて胸に刻んだ。


 

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京都旅行の折に、ご一緒した虎さんキリコさんに何か書くと約束したので、その約束のブツです。付け焼刃の上、拙いもので大変申し訳ないですが…お二方に。
某曲が妄想元ではあるのですが、原曲からかけ離れてしまったので(苦笑)、リンクは貼りません。

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