忍者ブログ

Buptiga

ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
MENU

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

非機能要求、エフ (前)

これのつづき。アンドロイド?なレンリン。

はじめだけマスターが出てきます。苦手な方はご注意を。

また前後編になってしまった。


------------------------


「マスター、これ!」
 玄関で靴を履き終え、男が立ち上がると、少女は元気良く声をかけた。両手に黒い鞄を抱え、持ち手を掴みやすいようほんの少し踵をあげる。男は礼を言って、鞄を受けとった。それを見上げる少女の背中は、夫を見送る新妻……ではなく、主人に尻尾を振る仔犬を思わせた。留守番頼んだぞ、と主人が言えば、仔犬はピシッと敬礼する。
「頼まれましたっ、リンに任せて!」
 張り切った大音声に、朝の空気が震えた。

 朝っぱらからあんなに興奮して、疲れないのだろうか。レンが呆れる間に、リンは尚もマスターにまとわりついている。マスターは留守番の諸注意を並べ立てながら、白リボンの頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。ますますもって犬である。
 きゃんきゃんと騒ぐリンの声に、隣近所からの苦情を案じていると、ふいにマスターがこちらに目を向けた。レンが何か反応を返す前に、仕上げとばかりにリンの頭をぽんとたたく。続けて腕時計に視線を落とすと、慌ててドアノブに手をかけた。
「それじゃなるべく早く帰るから」
 頼んだぞ、と二度目の言葉を残し、マスターがドアの向こうに消える。ドアが戻りロックがかかるまでの短い間に、廊下をバタバタと走り去る足音が聞こえた。リンが再び勇ましく返事をしていたが、最後のそれは自分に向けられていた気がする。

 起動三日目。といってもリンが起動したのは一昨日の夜だったから、彼女にとってはほぼ二日目か。自分の方が半日分だけ経験が長いのだから、しっかりしなければならない。

 リビングスペースの方へ踵を返すと、後ろからリンが追いかけてきた。
「マスターいっちゃったねぇ!」
「ん」
「留守番頑張ろうねっ!!」
「……リン、朝」
 テーブルからリモコンを取って、マスターが見ていたテレビの電源を落とす。振り返ると、リンはきょとんとこちらを見ていた。
「朝?えと、おはよう?」
「……おはよ。あのさ、朝だから、あんま大声出すなよ」
 起きぬけに交わしたはずの挨拶をもう一度してから、一応忠告をする。昨日から思っていたが、彼女は興奮すると声が大きくなるらしい。
「え、リン声おっきい?!」
「大きい」
 これからこの家に厄介になるのだから、主人にも隣人にも迷惑にはなりたくなかった。元気なのは良いが、朝は抑えて欲しい。そう伝えると、リンは真面目な顔をして頷き、声をひそめた。
「ど、どのくらいで喋ればいいかな……」
 今度は蚊の鳴くような声だ。極端すぎる。
「や、普通でいいから」
「普通……て、どのくらい?」
「だから…なんつーか、もっと大きくていいよ」
「でも」
 唇を尖らすリンを手招いて、ソファに座らせる。自分も隣に座って、リンに向き直った。
「あーって言ってみ」
「あーー……」
「もっと大きく」
「あーっ」
「大きすぎ!」
 びく、とリンが首を竦める。別に叱ったつもりはないのだが、リンは不安そうに瞳を揺らした。常識で考えてわかるだろ!と言いたいのを何とか飲み込む。だいたい、昨日は普通に会話をしていたではないか。
「俺が声出すから、同じ音量に合わせて」
「う、うん」
「あーーーーー」
「……あーーー」
 声が重なる。やっぱり声質似てんだな、と昨日も思った事を確認して、レンは声を止めた。リンの声も戸惑ったように止まる。
「続けて」
「え、」
「一人で」
「う。……あーー」
 似ているけれど、同じではない。リンの声の方が、くもりがなく澄みきった印象がある気がする。それも、昨日感じたことだ。
「もうちょっと大きく……そう」
 しばらく聞いてから、レンは手をあげて止めた。リンが期待にあふれた顔でこちらを見つめる。
「合格」
「やったあ!!!!!……ぐ」
 ぱしりとリンの口を塞いでも、部屋に響き渡った声は戻らない。レンの手のひらに密着した唇がもぐもぐと動いた。手を外してやると、必死の形相で口パクをしてくる。多分、ごめんなさい、だろう。
「……部屋、行こう。あっちならいいだろ」

 廊下へ続く戸を開けて、リンを促す。ドアノブが、心なしか熱をもった手のひらに冷たい。リンは素直に短い廊下を進んで、突き当たりの引き戸を開けた。マスターにもらった二人の部屋だ。リンに続いて部屋に入り、戸を閉める。
「ぷはー!解放感!!」
 リンが部屋の真ん中で、大きく伸びをした。
 この部屋はマンションの一番端にあたるから、多少騒いでも良いはずだ。現に昨日一日、この部屋でマスターと歌っていた。上下階にどう響くかは分からないが、少なくともマスターは歌うくらいなら平気だと判断しているはずだ。
「マスターが帰ってきたら、最大音量の設定下げてもらいなよ」
「ねえ、ほんとに声そんなにおっきい?!」
「大きいって。昨日は普通だったのに」
 思うに、今日のリンは張り切りすぎである。はしゃぎすぎと言ってもいい。しかし、ボーカロイドとして、自分で音量の調節もできないようでは困ると思うのだが…。
「マスターいつ帰るかなぁ」
「さあ。夜じゃない?」
「え。夜?!」
 目をまんまるにしたリンを見て、気づいた。彼女はまだ留守番をしたことがないのだ。
「仕事だから、遅くなるよ」
「そっかぁ」
 白いリボンが萎れる。面白い作りだ。ヘッドセットは取り外しもできるはずだが、どうなっているのだろう。と、リボンがぴょこっとはねあがった。
「ねっねっ、それじゃ何する?」
「何って」
「あそぼ!」
「…おう」
 きらきら輝く青に見つめられ、レンは困った。遊ぶと言われても、この部屋にはパソコンもゲームもない。あるのは、畳んで隅に置いてある布団二組くらいだ。マット運動?まさかそんな。
 いや、布団以外にも一つだけあった。
「…歌でも歌う?」
「いいねっ。歌おー!」
 リンがクローゼットを空ける。中のポールには服どころかハンガーさえ掛かっていないが、昨日マスターに貰った楽譜が、床に重ねてあった。マスターはまだデータがないことを謝っていたけれど、代わりにと家にあった紙の楽譜をあるだけ出してきてくれたのだ。
「昨日より上手くなってさ、マスターをびっくりさせよーよ!」
「じゃあ全部じゃなくて、何曲かに絞ろう。どれがいい?」
「んーーー、じゃ、これ!」
 リンの選んだ楽譜を受け取る。二人で歌えるようにと、マスターは楽譜を全て2部ずつ印刷してくれていた。ちょっと抜けたところさえなければ、なかなか良いマスターである。
「いけそう?」
「うん!」
 せーので拍子をとって、息を吸う。始めの音を舌にのせて――けれど、聞こえたのはリンの歌声だけだ。出したつもりのレンの声は、音になっていなかった。リンが不思議そうに顔をあげる。
 ピピピピッ。レンの頭の中で、無機質な音が響いた。これは、確か警告音だ。
「レン?」
「パスワードを指定してください」
 こぼれた言葉は、レンの意思とは無関係のものだった。



---------------------------------------------------------------------------

久しぶりに出せた!妄想→文章変換機がほしい。
マスターのイメージは、MMDの俺モデルです。

拍手

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

× CLOSE

Counter

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

プロフィール

HN:
シロセ_い
性別:
女性

バーコード

ブログ内検索

はじめに

こちらは管理人シロセが個人の趣味で萌を語るブログです。同人的要素を含みますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。また、製造元・版権元・その他各企業様とは全く関係ございません。
たまに誰得俺得な二次創作文らしきものを書きます(もくじ)。基本的にボカロ中心ですが、他ジャンルを語ることもあるかもしれません。
当ブログはCP傾向が強く、レンリン中心です。カイメイ・クオミク・ぽルカその他も出てくるかもしれません。
それでも良いという方はどうぞお立ち寄りください。
ついったー:好き放題呟いてます。
リンクについてはこちら

× CLOSE

Copyright © Buptiga : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]