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Buptiga

ぼーかろいどのキャラデザに惹かれた管理人が萌えを語るためのブログ。最愛は白リボンの黄色い子。
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非機能要求、エフ (後)


アンドロイド?なレンリン第二弾の後編。
前編はこちら。第一弾はこちら

最後の方、マスターが出てくるので、苦手な方はご注意を。


------------------------



「パスワードを指定してください」
「ど、どうしたの?レン?」
 口が勝手に動いて、喉が勝手に震える。リンに何か言ってやりたいのに、レンが発したい言葉は音にならない。感情のない声は、自分で聞いていてもまるで別人のようだった。
「パスワードを指定してください」
「パスワード?パスワードが必要なの?レン?」
 リンが徐々に青ざめる。柔らかい手がレンの腕をつかみ、揺さぶるのが分かった。それでやっと、身体も動かないことに気がついた。
「レン、レン?聞こえる?ねえ、パスワードって何?」
「パスワードを指定してください」
「レン!レンってば!!」
 ほとんど悲鳴のようなリンの大声がキンキンと耳に響く。だから、そんなに大声を出したらうるさいっていうのに。そう思ったところで、ぷつりと糸が切れたような感覚があった。
「……リン」
「レン!レン…ッ!」
「リンごめん、大丈夫だから」
 つかまれていた腕を急いで解いて、レンはリンの頬を両手で挟んだ。リンが瞬きを一つして、悲鳴が途切れる。れん、と最後に掠れた声が漏れた。
「ごめん、びっくりさせたな」
 少し顔の位置が近すぎたかもしれない。リンの目に薄い水の膜が張っていくのがはっきり見えた。手を離して身を引くと、リンの身体が追いかけてくる。
「こ、こわかったぁ……!」
 ぎゅうと抱きつかれた。レンの胸板あたりにきたヘッドセットの白いリボンが、ふるふると泣くように震えている。
 しばらく背中を撫でてやると、リンの腕の力が緩んだ。そのままずるりと下がって、リンはレンの腹にほっぺたをくっつけたまま、レンの顔を見上げた。
「レン、も、だいじょぶ?なんともない?」
「うん」
「いまの、何?」
 リンに負けず劣らず、レンも驚いていたし、慌てていた。だから、自分の頭の中にアラート表示が出ていることに気づいたのは、つい先ほどのことだ。どうやら、はじめの警告音と共に出ていたようだ。
「パスワードがないと、歌えない、らしい」
 アラートによると、歌を出力するには、8桁~16桁の英数字からなるパスワード、もしくは声紋認証が必要らしかった。

 昨日は、普通に歌えたはずだった。マスターの用意した楽譜を片手に、何曲も声を合わせたが、こんなことは一度もなかった。レンがしたのは、楽譜を見ることと、それを頭の中でロードすることだけだ。歌うために何かのプログラムを意識することはなかったし、もちろんアラートも出なかった。それなのに、今日になって歌えないとはどういうことなのか。
「昨日と違うのは、マスターがいないことか……おいこら、何してる」
 レンの片腿に頭を落ちつけたリンが、軽くネクタイを引っ張ってくる。首が締まらないよう慌てて身を屈めると、胸ポケットの重みが消えた。リンの手に、マスターから預かった携帯端末が握られている。
「マスターにはやく帰ってきてもらわなきゃ!」
「駄目」
 細い指から端末を掠め取って、後ろに隠した。リンが鼻先をレンの腹に押しつけて手を伸ばしてくるので、身体を後ろへ逸らしてできるだけ遠ざける。
「やっ、返してー!!」
「駄目だって」
「レンのキンキュージでしょ?!」
 マスターの仕事中に邪魔をしてはいけない。緊急時には連絡しろと言われたが、今はその時ではなかった。
「故障とか、そういうんじゃないから」
「……そうなの?」
「セキュリティ機能が作動しただけだと思う」
 管理者以外の者が無断で歌わせたりしないよう、ロック機能がついているのだろう。おそらく昨日は、マスターが傍で話していたから、声紋認証が自動的に働いていたのだ。
 リンがへたりと手の力を抜いて、再びもとの位置に収まった。携帯端末は諦めたらしい。小さく唸って考えた末、きゅっと眉を寄せる。
「でも、リンは歌えたのに、やっぱりおかしい」
 痛いところを突いてくる。確かに、何故レンにだけセキュリティ機能が作動したのか、その点は謎だった。
 しかしそれも、マスターの性格を考えれば一応の説明はつく。大方どちらかの設定だけ変えて忘れているのだろう。
「あの人、いい加減だからな」
「そうかなぁ」
「俺らを椅子に縛ったまま置き去りにしたんだぞ。リンは覚えてないだろうけど」
「あ、昨日マスターと話してたこと?」
 初日の件についてマスターに苦情を言ったのを、リンも隣で聞いていた。携帯端末は、その時に勝ち取ったものだ。
「でも、マスターも急いでたんでしょ?」
「だとしてもさ、俺がどれだけ……あー、リン、そろそろこの体勢やめない?」
「……レンのひざ、気持ちいい」
 男が膝枕したところで固いだけだと思うのだが、お気に召してなによりだ。体勢的にキツイ気もするが、仕方ない。先程はレンが怖がらせてしまったのだし。
 軽く息を吐くと、レンが許したのがわかったのか、リンがにぱっと笑った。
「リン、レンが好きだよ!」
「あー…うん、ありがと」
 突然の告白である。リンは上機嫌で、再びレンの腰に抱きついた。
「レンもリンのこと好きっ?」
「いや、何ていうか、まだ起動したばっかだし」
 所詮ただの軽口だろうに、自分は何をまともに答えているのか。普通に好きだよと返せば良かったと少し後悔する。実際、彼女には好感を持っているのだ。多少子供っぽ過ぎるきらいはあるが、その分素直で接しやすく、大変助かる。
「そっかぁ」
 リンが少し顔を俯け、レンの腹に顔を埋める。拗ねただろうか。どうフォローしようか悩んでいると、リンがくぐもった声を出した。
「あのね、リンはレンが相方で良かったなって思うの。…鏡音だからって、ぜったい仲良くなれるとは限らないでしょ。でもリンは、レンとなら、仲良くしていける気がしてるの。だってリンは、レンが好きだもん。だから、レンにも、リンを好きになってもらえたらいいなって。ええともちろん、強制じゃなくて。リンにしてほしいこととかあったら教えてほしくて。直して、ほしいところも。声がおっきいのは、気をつけるから、だから……」
 次第に小さくなった声が、自信なさげに消える。聞きながら、レンは少し申し訳ない気持ちになった。先程の好きは、軽口ではないのかもしれない。どういう好きかは別にしても、リンはリンなりに、レンのことを真剣に考えてくれているのだった。
「俺も、リンなら、仲良くしていける気がする」
 滑り出た言葉に、もう少し言い方はなかったのかと自分で苦笑して、レンはリンの頭に手を置いた。マスターがしていたように、ぐしゃぐしゃと撫でてみる。リンは気持ちよさそうに喉を鳴らした。今度は猫のようだとレンは思った。





 ジジジと床で携帯端末が震える。手をのばした拍子に身体が傾いて、太腿に乗ったリンの頭が落ちそうになった。
「…っと」
 額を支えて顔をのぞきこむ。ビー玉のような青い目は今は瞼に隠れて、小さな唇からは変わらず寝息が漏れていた。
 レンが頭を撫でているうちにうとうとし出したリンは、結局そのまま寝入ってしまった。せっかく寝るなら充電もしてしまえば良いのだが、生憎とこの部屋の共振器は窓側にある。レンの座るこの位置では、ぎりぎり充電可能域に入るかどうか。それでも起こすのはなんとなく嫌だった。
 頭を支える手をそのままに、そろりと端末を引き寄せる。ディスプレイの時計は、正午を過ぎたところだった。マスターからメールが届いている。

――留守番は順調か。

 あちらから連絡をくれるなら、今はメールしても大丈夫なのだろう。リンも心配していたし、一応確かめたくはあったので、簡単に事の報告をする。

――そうか、驚かせたな。レンの言う通り、セキュリティ機能の一つだから安心しろ。設定から外せば、認証なしで歌えるようにできるだろう。パスワードを教えてやりたいところだが、メールで送るのは抵抗があるな。すまんが、帰るまで待ってくれ。

 そうだろうとは思っていたが、実際に肯定されるとやはりほっとした。リンと歌うのは、明日だっていい。
 最後に一応、リンが普通に歌えた理由を確認する。リンの方はあらかじめ機能の解除をしていたのだろうと、レンは思った。
 けれど、マスターの答えは予想外のものだった。

――リン?あー、それは単に型の違いかな。リンにはロック機能はついてない。

――ああ、そうか。言ってなかったな。おまえら、型が違うんだよ。レンはPro、リンはExpressだ。


 ほとんど無意識のうちに、レンはリンの髪をかきあげ、ヘッドセットをずらしていた。そっと耳をつまんで裏を見ると、確かにExpressと記されている。指でゆっくりと、文字をなぞった。その感触を指先が覚えているうちに、今度は自分の耳へ手をやる。英字三文字分の感触。そこにProと刻まれていることは、誰に教えられなくとも知っていた。

 ショックよりも何よりも、そういうことかと、納得する気持ちが強かった。
 近年のボーカロイドは、通常版の他に、機能が限定された廉価版が売り出されることが多い。V2CVシリーズにおいてはProが通常版で、Expressはその廉価版だった。
 リンの初起動時間がレンより長かったことも、音量を自分でコントロールできないことも、それで説明がつくのだ。もしかすると言動がレンより幼いことだって、そのせいかもしれない。

 リンはレンが相方で良かったなって思うの。

 先程聞いたリンの言葉がよみがえる。リンは、どう思うだろう。
 ヘッドセットを戻し、髪を整えてやる。ふ、とリンが息をついた気がした。顔を見ると、口元が微かに笑っている。
 機械の詰まった自分達の頭部は人間のそれより軽い仕様のはずだが、それでも存外重く、そして暖かい。寝ている間も内部が動いているという点では、人間とそう変わりはなかった。だからきっと、夢も見るのだろう。
 リンの目覚めを待つのは二度目だなと、ぼんやり思った。



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続く雰囲気な気がしなくもないですが、とりあえず、続きは存在しないです。
でも、この設定で書きたいことが少しだけあるので、気が向いたらまた書くかも。
マスターがなー、面倒だからあんまり出したくないのに、出さないと進まないという。
決まってるのは性別だけだから、性格とかころころ変わりそうだww
文章を書きたいわけじゃないので、まぁこうなってしまうのですね。


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